ミュージシャンの真価とは ~ ミュージシャンの裏側

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ミュージシャンの真価とは

バンドが全盛期だったころ、私もちょうど青春時代の真っただ中にいました。
夢を追い求めるハングリー精神と自信にあふれていたあの時代、私の心を鷲づかみにしたあるツアーバンドがありました。
彼らはロックンロール界の神的存在として、若者の熱いまなざしと憧憬を一身に集め、あがめられていました。
そんなある日、私にとって忘れない出来事がありました。
ライブを終え、フロアで仲間内で缶ビールと軽いスナックで、ささやかな打ち上げをしていた時のことです。
崇拝するそのバンドのボーカルを務めるTさんが、私たちのライブを聴きに来てくれていたことに気づきました。
私たちは驚きましたが、それだけではなく、Tさんは打ち上げをしている私たちのそばに来て「素晴らしいライブだった。おれの音楽は失敗だよ」と言ったのです。
他の追随を許さず、不動の地位を確立したと思われたバンドのボーカリストから出たその言葉に、私たちもしばらく茫然としてしまいました。
音楽に限らず芸術の世界とは、他人からは成功と思っていても、本人にとっては答えの出ない永遠の葛藤の世界であることを痛感した一瞬でした。
あれから数年の年月が流れ、私自身も自分の心の世界を音楽に表現するべく、模索の日々を過ごしてきました。
そして、いまだに終わりなき試行錯誤の日々が続いています。いつの日か、追い続けてきた世界を完全に表現することができるのでしょうか。
この葛藤に遭遇した時こそ、ミュージシャンの真価を問われるべき時だと私は思います。


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